晴れ。
とらちゃんの出迎えなし。
車を停める前に、横目にとらちゃんの姿が目に入っていたので、迎えに行く。
水の入ったボウルを前にじっとしていた。
声をかけても反応しない。
背中を撫でるとやっと気づいた。
たぶん、ぼくの車が入ってきたことに気付いていなかったのだろう。
車までついてきたのでその場で食事をさせる。
興味はある。
朝としては…というカッコ付きではあるが、よく食べたほうだと思う。
朝一番の様子がへンだったので、抱き上げて様子を見ることにする。
ぼくは昨日の朝ほど寒さを感じなかったが、
とらちゃんは寒いと感じているのかもしれない。
あれほど抱っこを拒絶していたとらちゃんが、
いともたやすく抱き上げられるだけでなく、
長い時間、そのままでいられることに唖然とする。
抱っこできるようになった喜びよりは、
そんな状態になってしまったことが切ない。
他の猫の食事が後回しになってしまったが、
とらちゃんがそういう状態だから仕方ない。
とらちゃんが自ら降りるまではそのままでいた。
他の猫たちの食事を済ませ、とらちゃんの様子を見に行くと、
いつもいるような場所にいない。
そこで、とらちゃんがたまに行く場所まで足を伸ばすと
池の対岸にいた。
おそらく、水を飲みに来たものと思われたが、
体力が落ちているのに、あえて、近場ではなく、
ここまで来たのかがわからない。
全面的に陽が射す場所ではなかったので、抱き上げて日向まで移動。
最近、時々、感じることだが、一定量、動いて疲れてしまい、
その場で回復するまでじっとしているのではないか…
そんなふうに思ってしまう。
こんな抱かれ方をしているにもかかわらず、
おとなしく身をまかせてくるとらちゃんが信じられなかった。
そんなに寒いのだろうか?
あるいは、そんなに疲れているのだろうか?
とらちゃんの様子を見ているうちに、
「ひょっとしたらこのまま逝ってしまうんじゃないか」という
不安に襲われた。
それほどまでに、なんの抵抗もなく、まるで病気の猫のように
おとなしかったのだ。
ちーちゃんを看取った時に、こんなふうに抱き続けていたのを思い出すくらいに…
「このまま、今日一日、動かなかったら…」と思うくらいに
長い時間、同じ態勢でいた。
やっと、とらちゃんが自ら降りた。
何故か、車に近づいていったので、「もしや…」と思い、
急きょ、餌を用意して与えてみるとけっこう食べた。
これはあくまで推測であるが、とらちゃんはかなりの低体温状態だった。
長い時間、日向で抱かれることで、体温が戻り始めた。
…そんなふうに感じる出来事だった。
一時は今日はここでとらちゃんを看取ることになるのか…とすら
思っていた。
とりあえず、2度目の食事もできたことで撤退することにした。
すでにいつもぼくが帰る時間になっていた。
日中はかなり気温があがったので、
おそらく大丈夫だろうとは思っていたが、
夕方、姿を見せたとらちゃんは元気そうだった。
お腹も空いていそうだった。
予想に違わずよく食べた。