曇り。
とらちゃんの状態がかなり危ういと認識しているので、
到着してすぐにとらちゃんの姿を探すが見当たらない。
ハウスを覗いてもいない。
これは時間がかかるかもしれないと、
いったん、他の猫たちの食事を先にさせることにする。
ひょっとしたら、ボート下のハウスに入っているかもしれないと、
ボートを持ち上げると予想通り、そこに入っていた。
食事を準備する音は聞こえていたはずなので、それでも出てこないのは
食欲がないと思われた。
そうすべきか迷ったが、いったん、ボートを降ろしてとらちゃんが
自発的に出てくるのを待つことにした。
とらちゃんは必ず出てくるといった勝算があったわけではない。
とらちゃんが自ら出てこない限りは何をしても
上手くはいかないだろうと判断してのことだ。
しかし、とらちゃんはしばらくすると出てきた。
足元がおぼつかない。
いままで以上に痩せてしまって筋力が落ちていることもあるだろうが、
調べると腎臓病の末期症状として貧血があげられていたが、
とらちゃんを触って温かみを感じなくなっているのはそのせいじゃないかと
いう気もしている。
釣り人の近くで待機するとらちゃん。
不思議なのは餌への食欲をまったく見せない状態なのに
生魚は食べたいのだろうか?
だとすれば、今のとらちゃんの食を支えられるのは
釣り人が釣った雑魚ということになる。
ぼくも祈るような気持ちで、雑魚がつれることを祈っていた。
とらちゃんがいた場所から少し離れたところで雑魚が釣れたらしく、
とらちゃんが雑魚好きなのを知っている釣り人がそれをもらって持って来てくれた。
とらちゃんは食欲がないのが嘘のように目の色をかえてかぶりついた。
餌にはまったく見向きもしないのに、この違いは何なのだろう?
考えられるのは加工食品にはない、いまのとらちゃんに必要な、
あるいは体が求める何かが、生餌にはあるということだろう。
この後、釣り人にカリカリをもらうと食べていたので、
生魚でスイッチが入ったかと、ぼくも餌を用意したが、
まったく、口にしなかった。
ぼくが今朝、見たとらちゃんが食べたのは一匹の魚とわずかなカリカリだけだった。
わずかだが、目ヤニがでていたので、それを拭き取ろうと
いったん、餌場に連れていき、次亜塩素酸水で拭いた。
その後、ひなたぼっこをはじめたので、傍について撫でていると
体を横たえた。
調子がいい時のとらちゃんなら、こんなふうに撫で続けていれば
へそ天になったはずだが、一向にそうならなかったのは
おそらく、体調のせいだろう。
なんだか、いろいろなことが悲しかった。
ぼくが荷物をまとめて帰ろうとすると、
とらちゃんがさっきとは場所を変えて寝ていた。
寝姿がいつものとらちゃんのそれではなく、
「疲れ」がにじみ出ているように見えた。
いままで、とらちゃんの寝顔や寝姿は「安らか」という言葉が
ぴったりだと感じていたが、今朝、見たそれは
「安らか」からは程遠いものに見えた。
夕方、ぼくが到着すると、とらちゃんは表にいた。
朝、食欲増進の薬を飲ませておいたので、
食欲が戻ることを期待していたのだが、
反応は鈍く、その様子からも食欲には期待できなかった。
実際、餌場には遅れて来たものの、
いつものようにぼくの傍には来ず、距離を置いていた。
とらちゃんを抱きかかえてぼくの傍に連れて行き、
餌を出すが、積極的に食べる感じではない。
それでも、いまのとらちゃんの状態を思えば、
少しでも自発的に食べてくれるだけまし…と考えるべきかもしれない。
目ヤニは目立たなかったので、抗生物質ではなく、
食欲増進効果のある薬を飲ませた。
先日のぶり返しを経験しているので、
とても迷う。
抗生物質を最後に飲ませたのが、昨日の午後3時頃だったから、
効力が薄れ、ぶり返すのであれば、すでに症状は出ているだろうという
判断もあった。
食後、とらちゃんは釣り場ではなく、ハウスでもなく、藪の方へ行ってしまった。