晴れ。
昨日のことがあったので、車を停めるまでに釣り人の車の下を
チェックしながら徐行。
とらちゃんの姿を発見し、昨夜をなんとか乗り切れたことに安堵。
だが、ぼくが車を停めてもとらちゃんが来る様子はない。
すでにとらちゃんは動くことそのものが負担になっているで
あろうことを痛感。
とらちゃんと時間をかけて関わりたかったので、
先に他の猫たちの食事をさせる。
とらちゃんをぼくの車のところまで運び、
猫缶を与えてみるが、ほとんど口にせず。
エナジーちゅ~るを強制給餌するが、半分程でぼくが諦めた。
とらちゃんはぼくの腕の中でおとなしく抱かれている。
すでに抗う気力も力もないことが予想された。
ここ数日、まともに食事ができていないのだから無理もない。
「今日、逝ってしまうかもしれない…」そんなことが頭をかすめる。
長期戦になると思い、外で中腰のままいるのは不可能だと思い、
車内へ移動する。
もう、そこにはかつてのパワフルなとらちゃんの面影すらなかった。
とらちゃんが表に出たそうな素振りをみせたので、
いったん、外へ出す。
どうやら、排泄のようだ。
すでにかつての両足で踏ん張る、いわゆる「ウンチングスタイル」が
とれなくなっていることに衝撃を受けた。
後ろ足の踏ん張りが歩行でさえ、効かなくなっているのだ。
無理もない。
わずかな便を出した後、とらちゃは写真のように倒れ込んでしまった。
排泄で力むだけでもエネルギーを使うのだろう。
この姿にはショックすら受けた。
この時、「もう、強制給餌はやめよう…」と思った。
今の状況を乗り切るための強制給餌には意味があるかもしれないが、
おそらく、いまのとらちゃんには未来はない。
苦痛の瞬間を長引かせるだけのような気がしたからだ。
ぼくの目には生きていることが不思議といえるくらいに見えた
すでに満身創痍なのは間違いなかった。
再び、とらちゃんをフリースで包み、車内にいれた。
またしばらくすると、とらちゃんが外に出たそうな様子を見せた。
いったん、外に出すと水が飲みたいようだ。
とらちゃんが好む池の角の近くに車が停めてあったが、
生憎、今日はその角にはゴミが集まっている(風等の関係で日によって
ゴミがたまる)。
とらちゃんも迷っているようだった。
とらちゃんがたまに行く、流水のある方向に体を向けたが、
目的の場所までは、今のとらちゃんではかなり無理がある。
とらちゃんを抱きかかえてその場所に向かった。
わずかだが、とらちゃんはそこで水を飲んだ。
最近は水を飲むのも億劫になっているのか、
一時期に比べると水を飲む姿を見なくなった。
これでは腎臓にはよくないのだが、食欲がなくなるのと同様、
体が受け付けなくなっているのかもしれない。致し方ないことなのだろう。
再び、車内へ。
ぼくはすでにここでとらちゃんを看取る覚悟でいた。
そのくらいにとらちゃんの状態は危うく見えたからだ。
だが、そんなぼくの覚悟とは裏腹にとらちゃんは出ていくことを選んだ。
近くの日陰で体を横たえた。
そんなとらちゃんの意思を無視して再び車に入れるわけにもいかない。
悩んだ末にぼくは撤退し、夕方に来ることにした。
いざ、とらちゃんを放って帰ってしまったものの、
次から次へとネガティブなことばかり考えてしまう。
夕方、早めに行った時、とらちゃんが姿を見せないのは想定済みだったが、
問題はどこにいるか、あるいは、発見できるかだった。
とらちゃんは釣り場から餌場に向かう途中にいた。
抱き上げて餌場へ連れていくが、
ぼくが餌を準備している間にボート下のハウスに入ってしまった。
まったく食べる気はないようだった。
いったんはハウスに入ったとらちゃんの背中にフリースを掛けたが、
しばらくして、考え直し、少なくともぼくがいる間だけでも
いっしょに居ようと、フリースで包み、とらちゃんを抱いていることにした。
かなり長い時間、そのままでいたが、その間、
とらちゃんはほとんど無反応だった。
とらちゃんがハウスに入りたそうな素振りを見せたのを機に
ぼくも諦め、とらちゃんをハウスにいれた。
しばらくはボートを上げたままにして、時々、
とらちゃんの様子を見ていたが、
それではとらちゃんも気が休まらないだろうと、
ぼくも諦めてボートを降ろした。
ひょっとしたら、これがとらちゃんとの最後かもしれないと思いながら…。