曇り。
いつもの釣り人の車の下にいないので、いよいよ、危機的な状態かと
思ったら、さらに先の別の釣り人のところにいた。
何故か、右下半身が尻尾も含めて汚れ、濡れている。
おそらく、流水の水場まで遠征し、倒れたのだと思われた。
ティッシュで水分を拭き取り、次亜塩素酸水で匂い取りをする。
遠出するくらいだから、いくらかでも調子がいいのかもしれないと
餌を与えてみたが、口はつけなかった。
目の縁の奥には若干、透明な目ヤニが溜まっていたので、
次亜塩素酸水で拭き取る。
マットの上で休ませていると、釣り人が雑魚を届けてくれた。
驚いたのはその後のとらちゃんで、目の色を変え、
魚にむしゃぶりつく。
食欲がまったくない猫とは思えない食べっぷりだ。
何故なんだろう?
かといって、刺身ではダメなのだ。
なんとなくだが、昨日までと比べ、気持ち、調子が良さそうに
見えるのは、昨日、飲ませた抗生物質が影響しているのだろうか?
もし、そうなら、ぼくはとんだ勘違いをしているのか?
その後、釣り人はさらにもう一匹の魚を届けてくれた。
とらちゃんは前回同様に食欲を見せた。
ただ、歯のまったくないとらちゃんが魚を千切るのは難儀するし、
一尾まるまる食べきるわけでもない。
それでも、そんな姿を見られたこともあり、
今朝はぼくもそれほどの危機感を感じず、早めに撤退した。
夕方、行くと、いつもならとらちゃんがいるエリアに姿が見えなかった。
とりあえず、他の猫たちに食事をさせ、じっくり探すことにした。
ちょうど、そのタイミングで雨が降り出した。
幸い、雨は短時間で上がったが、雨の降り方次第では、
とらちゃんはハウスに戻って来るんじゃないかと期待したが、
そうはならなかった。
普段、とらちゃんが行きそうな場所を探してみるものの、
その姿はない。
いったん、見に行った流水の場所へもう一度、行ってみることにした。
朝のとらちゃんの下半身の濡れと汚れはその場所でつけた可能性が
髙いように思ったからだ。
二度目も姿は発見できなかったので、思い切ってその先まで行ってみると、
そこにとらちゃんを発見した。
口に何かついているなと一瞬、感じたが、
抱き上げるとそれは消えていた。
いま、写真で見ると泡だ。
それがなにを意味するのかわからないが、
とらちゃんのから出たものだと考えるのが自然だろう。
写真を詳細に見るとそれは鼻から出ているようにも見える。
あまり考えたくない話だが、すでに体力の限界に近い状態で、
わざわざ、こんな場所に来るのは「死に場所」を求めてきたと
考えてしまう。
それ以外にこんなところまでくる理由がないからだ。
何時からここへ向かってきたのかはわからないが、
おそらく、休み休み来たのだろう。
ぼくがとらちゃんを見つけた時もとまっている時だった。
抱き上げたとらちゃんにはすでに力は残っていないように感じた。
いくらとらちゃんの意思でここまで苦労して来たとはいえ、
ぼくが見つけてしまった以上、とらちゃんの意思を尊重して
そのままにしておくなんてことはできなかった。
とらちゃんを抱いてハウスまで連れて行った。
とらちゃんにしてみれば、命をかけた最後の大仕事を、
苦労してたどり着いた道半場で連れ戻されるのは不本意だったに
違いない。
それでもとらちゃんは明日の朝、ここに居るだろうか?
それとも、もう一度、夜間に行動に移すのだろうか?
いずれにせよ、明日、答えが出る気がする。
夕方になって、局所的なものかもしれないが、
雷雨になっている。
あの時、とらちゃんを見つけたこと。
とらちゃんをハウスに連れ戻したことは
ぼくのエゴだ。
とらちゃん、許してくれ。