曇り。
ぼくが到着した時、とらちゃんの姿は釣り場にはなかった。
その後、餌場へむかう途中に出てきたという釣り人が教えてくれた。
正直、昨日の状態から、今朝までもたないだろうと予測していたのだが、
とらちゃんは生きていた。
だが、すでに限界に達しているであろうことは見た目にも明らかだった。
雨上がりで地面が濡れていたので、とりあえず、未使用のマットを敷き、
その上に乗せた。
他の猫たちに食事をさせてしまわないことには
とらちゃんとじっくり関われないから、その間、待ってもらうことになるからだ。
他の猫たちに食事をさせ、とらちゃんをフリースで包み、車内へ移動。
長期戦を覚悟してのことだ。
途中、何度か外へ出たがる素振りを見せるので、
その度に外へ出す。
すでに足元もおぼつかない…そんな歩き方しかできなくなっていた。
水を飲むにも、以前のような踏ん張りが効かないから、
腹を地面に着けて飲んでいる。
そんな姿は痛々しく見えたし、切なかった。
もう、とらちゃんが奇跡的に復活するということがあり得ないことは
ぼくにもわかる。
だから、せめて、穏やかに最後を迎えてほしい。
願うのはそれだけだ。
車内にいても頻繁に外に出たがる様子を見せるようになり、
迷ったが、餌場へ向かう途中の比較的、安全なエリアに連れていくことにした。
いまのとらちゃんでは釣り場エリアにいるのは
交通事故の可能性もあり得るため、いさせたくなかった。
夕方までは持つだろうといったん撤退することにした。
夕方、ぼくが行くと、餌場のマットの上にいた。
すでに自ら動くことはできないかのように見えた。
だが、水を飲むことはなかった。水を飲む、気力も力も残されていない…そんなふうに見えた。
後ろ髪ひかれる思い出はあったが、とらちゃんをハウスにいれ、ぼくは撤退した。今夜一晩、おそらく、もたないような気がする。