晴れ。
とらちゃんの埋葬をどうしようかと考えれば考える程、
行くのが億劫になる朝。
ぼくが到着すると、釣り人がとらちゃんが出てきていることを
教えてくれた。
正直、昨日の状態で、自らハウスを出てきていることが
信じられなかった。
昨夜の雨で濡れた地面の上で力尽きていたとらちゃんを
慌てて日向へ連れて行き、マットを敷いてその上に休ませる。
急いで他の猫たちの食事を済ませ、
とらちゃんをフリースで包んで車内へ移動。
晴れ間が優勢になると、車内の温度が上がるせいか、
とらちゃんにとっても暑さを感じるのか、
外へ出て、水飲み場に行きたがる。
必ずしも水を飲むわけではないところを見ると、
コンクリで体を冷やしているようにも見えるが、
実際のところはわからない。
歩くのもフラフラだし、すでに中腰で長い時間いられない。
とらちゃんが一番、辛いのはわかってはいるが、
それを見ているぼくも辛い。
車内と外を行き来しながら、落ち着ける環境を探る。
おそらく、もう、自分を支える体力も残されていないのだろう。
フリースはむしろ、暑いのかと使うのをやめてみたが、
大きな変化はなかった。
いったん、餌場へ連れて行き、そこで休ませることにし、
ぼくはいったん撤退する。
だが、とらちゃんの様子が気になって仕方がないので、
昼に再び行く。
ぼくが抱きかかえるが、しばらくすると、とらちゃんが
降りたそうな素振りをみせたので、降ろすと崩れるように
横たえてしまった。
おそらく、抱かれる状態の体位が楽な姿勢ではなくなっていたのだろう。
とらちゃんの状態は悪化しているようで、
すでに朝のような姿勢すらとれず、
体を横たえるしかできないようだった。
フリースを敷いてそこに寝かすことにした。
痩せて来ていたのがさらに痩せ、顔つきまで変わってしまった。
撫でたり、肉球をもんであげてもほとんど反応はなく、
尻尾もほとんど動かない。
ただ、呼吸をしていることの証にお腹が上下している。
夕方になり、気温の低下を感じ始め、ぼくも上着を羽織ったので、
再び、とらちゃんをフリースで包んで抱く。
せめて、最後はぼくの腕の中で看取ってあげたい。
だが、そんのぼくの願いとは裏腹に、タイムリミットが来てしまった。
もっとも、とらちゃんが息をして生き続けていることは喜ぶべきことなのだ。
仕方がないが、とらちゃんをハウスに入れ、ボートを降ろす。
明日の朝、再び生きたとらちゃんに会うのは難しいとは思う、
だが、一方でとらちゃんの生命力の強さに、
これまでのぼくの予想はことごとく外れた。
明日も外れてくれることを祈ろう。